夢を結晶させた建築 ホテル川久
夢を結晶させた建築 ホテル川久
和歌山・南紀白浜に建つホテル川久。
初めて目にしたとき、その姿は周囲の風景から浮き上がるようで、少なからず戸惑いを覚えた。
海辺のリゾートに想像する軽やかさとは異なり、
そこに現れるのは、城のようでもあり、異国の宮殿のようでもある巨大な建築だ。
この建物を設計したのは、建築家・永田祐三。
1980年代後半、いわゆるバブル期に構想された川久は、
当時の日本が持っていた経済的な勢いと、「本物をつくる」という強い意志を、
そのまま建築として結晶させた存在でもある。
規模、素材、意匠、そのすべてが妥協なく積み重ねられている。
館内に足を踏み入れると、まず迎えるのが金箔天井のエントランスホールだ。
圧倒的な装飾性を持ちながら、不思議と下品さは感じない。
ここでは日常の尺度が一度解体され、別の時間軸へと誘われる。
大理石、ステンドグラス、重厚な柱や壁面装飾。それらは単なる贅沢ではなく、
「非日常」を成立させるための装置として丁寧に配置されている。
西洋の古典様式やイスラム的なモチーフ、日本的感覚までもが混在する空間構成は、
一見すると折衷的だが、全体としては強い統一感を保っている。
合理性や効率とは異なる価値軸で組み立てられた建築だからこそ、
今の時代に見ると新鮮に映る。
巨大なスケールを持ちながら、館内には視線の抜けや光の溜まりが巧みに設えられ、
人を過度に圧迫しない。
豪奢でありながら、どこか静かで、わずかな孤独を含んだ空気。
その複雑な表情こそが、ホテル川久という建築の奥行きなのだと思う。
時代の評価は変わっても、建築が放つ力は消えない。
ホテル川久は、過去の夢の象徴であると同時に、
今なお問いを投げかけ続ける建築だった。
2025.03.29
和歌山 ホテル川久 / 1993年村野藤吾賞
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